クワガタやカブトムシの飼育、採集を趣味にしていると、あまり周囲の大人から良い顔をされません。
一体何故でしょう?
答えは簡単。
他者に不快な思いをさせる人が多いから。
昆虫が嫌いだから・・・という『不快』な思いではありません。
例を挙げてみましょう。
クワガタ・カブトムシ採集者の罪
Aさんがクワガタを採集しにやって来ました。
Aさんは、バナナを焼酎に浸けて作ったトラップをストッキングにいれ、森中の木々に仕掛けていきました。

数日後・・・
この森の所有者であるBさんが訪れると、そこにはカラカラに干からびたトラップが仕掛けられたまま放置されていました。
雑木林が消える!?
Bさんは森の所有者です。
知らない人がいるかもしれませんが、日本の森という森、林という林、山という山、全て必ず所有者が存在します。
言い換えれば、誰のものでもない自然は、この日本に存在しません。
もしあなたの家の壁に、知らない人が落書きをしていったとしたら、あなたはどのように感じますか?
何度も何度も、同じ人ではないかもしれないけれど同じことをされたとしたら・・・
森の所有者Bさんは、とても不愉快だと思いました。
それはそうです。
その度に毎回毎回トラップを自分が付けた訳でもないのにはずして回っているので、いつもクタクタに疲れきってしまいます。
Bさんは考えました。
こんなに何度も大変な思いをするのなら、いっそ森をなくしてしまえば、もう二度とこんな不愉快な思いをすることもない。
・・・数ヶ月後。
森は大きなマンションに変わってしまいました。
問いかけ
ここで問題です。
嫌な思いをした人は、一体何人いたでしょう?
正解は『たくさん』です。
決してBさん一人だけではありません。
何故でしょう?
答え
森というのはその中を歩くだけで、心も体も癒されます。
そういった癒しを求めて散歩に来ていた人たちにとって、森がなくなってしまうのはとても悲しいことです。

それだけではありません。
森には昆虫だけではなく、鳥や動物、花など、他にもたくさんの生き物が住んでいます。
それらを観察に来ていた人も、この森がなくなってしまって観察が出来なくなってしまったのですから、やはり被害を受けた人たちです。
そして、最大の被害者はその森に住んでいた『生き物たち』です。
考えてみれば当たり前のことですよね?
彼らは自分たちの家そのものを、奪い取られてしまったのですから。
トラップだけが悪?
例としてトラップを挙げましたが、クワガタ・カブトムシ採集の問題はそれだけではありません。
クワガタの幼虫は朽木の中で生活しています。
その幼虫を採集するために、朽木という朽木を全て破壊し尽くしていく採集者もいます。
朽木と言えど、これも立派な森の財産です。
当然、結果は先ほどと同じことになってしまいます。
上の写真をみて、美しいと思う人が果たしているでしょうか?
森の中で朽木が転がっている分には何も気になりません。
自然の中にあって当然ですから・・・
森の中で朽木が粉々になっていたらとても気になります。
自然の中にあったら不自然ですから・・・
まだまだあります、こんなこと
まだまだあります。
森の中でタバコやペットボトル、ビニール袋を捨てていく人、木の根元を掘り返してそのまま放置していく人、夜の採集で辺り構わず大きな声ではしゃいでしゃべり、懐中電灯で照らしまくる人。。。。
一体誰がそのゴミを拾うのですか?
一体誰がその穴を埋めるのですか?
一体誰が寝ているそばで知らない人の話し声が聞こえたり、懐中電灯で照らされながら寝たいと思いますか?
タバコもペットボトルも、ビニールだって、残念ながらどんなに時間が経っても分解されません。
いつまでもそこに『不自然なもの』として残ります。
もし持ち帰っていたらどうでしょう?
自然な状態が保たれます。
木の根元が乾燥してしまうと、その木は残念なことに枯れていってしまいます。
だって、木の根は水分や養分を土から吸収するためにあるのに、その土を誰かに掘り返されてしまったのですから。
解決方法は簡単。
掘ったのなら埋めれば良いだけです。
大きな話し声は気をつけて小声で話せば良いだけですし、懐中電灯も人家の近くでは使わなければ良いだけです。
そう、どれもこれも採集者が気をつけさえすれば、他者を不愉快にすることもなく、自然の景観を損ねることもないのです。
もううんざりですか?
確かに・・・私もうんざりです。
わざわざこんなこと言われなくても本当はわかっているはずなのに、言い聞かせなければいけない人たちがたくさんいるのですから。
私たちに出来ること
話を元に戻しましょう。
今まで例に挙げたことは、全て実話です。
こういった人たちがたくさんいるために、当然の結果です。
ただ、ちょっと待ってください。
よぉーく考えてみてください。
そこに森がなくなってしまったら、採集者であるあなたも困るのではないですか?
クワガタやカブトムシを採集するためには、絶対に森や林、山が必要です。
決して彼らの生活は、デパートやホームセンターのケースの中ではありません。
もしあなたが、自分で仕掛けたわけではなくても、見付けた廃トラップを回収していたら?
もしあなたが、朽木の削りカスを埋めていたら?
もしあなたが、落ちていたゴミを拾っていたら?
もしあなたが、木の根元が掘り返されているのを発見したとき埋めておいてあげたら?
もしあなたが、自分の家も同じ状況になったら・・・と考える、ちょっとした気遣いの出来る人だったら?
きっと森の所有者からも、その景観を楽しむ人からも、森に関わる全ての人や生き物たちから、感謝されることでしょう!
・・・やっていることはクワガタやカブトムシの採集。
これは変わりません。
でも、あなたを取り巻く環境はまるで違うものになります。
そう、クワガタ・カブトムシの採集が『悪』ではないのです。
『悪』と見られる最大の原因は、その採集の仕方なのです。
そしてあなたは人々から感謝され、思う存分これからも、ずっと採集を続けることが出来るようになるのです!!!
自然の摂理
もう一つ、今度は違う観点からこれらの問題を考えてみましょう。
私が普段生活している場所では、あまり自然を意識することなく生活してしまっています。
恐らく、これは身近に自然がある、ないの問題ではなく、自然の恩恵に本当は頼っているという事実を忘れているのだと思います。
それでも自然は、人間が(というよりは、全生物が)生きていくために必要な環境を提供してくれています。
食物連鎖という言葉をご存知でしょうか?
自然破壊がおこるとこのピラミッドがくずれて生物のバランスが狂ってしまいます。
(環境省HPより抜粋)
クワガタやカブトムシの幼虫は、この図の中で言えば【分解者】にあたります。
彼らが朽木や腐葉土を食べて分解することで肥沃な土地となり、【生産者】となる植物が育まれます。
しかもそれだけではありません。
【分解者】が作った肥沃な土地は、彼らが移動したり、糞をしたりすることでフワフワに柔らかい状態となり、雨が染み込みやすくなっています。
こうして雨が染み込むことで、地上に降った雨をろ過する役割も果たしています。
しかし、もし【生産者】たる森や林がなくなってしまったら?
【分解者】たちはエサとなる朽木や腐葉土が得られなくなってしまい、生きていくことが出来ません。
当然土地は痩せて、新たな【生産者=植物】は育たなくなってしまいます。
こうなるとそれらを食物としていた昆虫類や小動物が生きていけなくなり、それらをエサとしていたもっと高位の【消費者】も生きていけなくなってしまいます。
しかも地面は分解者によって掘り返されることがなくなってしまうため、雨水が染み込みづらくなってしまいます。
当然、土がろ過してくれる水の量も激減します。
その結果、私たちの飲み水がほとんど濾過されずに川を流れることになり、集中豪雨や台風のときには河川が氾濫し、洪水の被害が増えることになるでしょう。
それに濾過されない雨水が地表の農薬やダイオキシンなどの有害物質を溶かし込みながら河川に流れ込むことで、川の生き物(魚や貝、カメや昆虫、藻草類など)にも影響が出ます。
書き連ねればキリがないほど、山や森、林だけの問題ではなくなり、最終的には人間の首を絞めることになるのです。
あなたはどうしますか?
私たちは今、重大な岐路に立たされています。
ただキレイ事で森を守ろう、自然を大切にしよう、では通用しない状態になってしまいました。
それもこれも、全ては自分たちクワガタやカブトムシを採集する『人間』が蒔いた種です。
もちろん採集者だけでの責任でないことは百も承知しています。
しかし、だからといって『自分はやってない』…は、もう通用しないのです。
このページを最後までご覧になられた方に、一つだけお願いがあります。
どうかこれ以上、自分の首を絞めるような行為はしないで下さい。
自分だけが変ったって・・・と思いますか?
でも、それでもいいんです。
一人でも、少しでも今よりも状況を良くすることが出来れば。
100年後、1000年後には、きっとかつての環境を取り戻した姿になってくれることを信じて・・・
- 2007.10.12 -
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